オフィス・ラブ #another code
そうやって無視するのが精一杯だった。

内心では、もう頭を抱えたい思いで。


なんでそんな、真面目なんだ。

どうしてそんな、正攻法で来るんだ。


そうやって、お前に正しい出かたをされたら。

俺だけが、間違っているような気になるじゃないか。


まるで。


まるで俺が。

ただ、ダダをこねているだけの、子供みたいに。


…思えてくるじゃないか。



大塚が隣のスツールに腰をかけた。

時に驚くほど強情な彼女が、憎たらしくて仕方なくなる。



「あれは、泊めたわけじゃありません」

「なんで俺に、そんな話をする」



何も聞きたくなくて、煙草とPCに意識を集中した。



「聞いてほしいからです」



またそうやって正論を吐く大塚に、無性に腹が立つ。

もう、頼むから早く出てってくれ。



「仕事場で、そういう話は聞きたくない」



苛立ちを隠すつもりもなく言い捨てると、大塚が一瞬黙ったあと、ぎょっとするほど低い声を出した。



「じゃあ、仕事に関係のある話にしましょうか」



何を言いだすんだ、と煙草に火をつける手をとめて、思わず見たその顔は、こちらが怯むほどの怒りに満ちていて。

その調子で、早く自分に見切りをつけて立ち去ってほしいと願ったのだけれど。



「堤さんとの話を聞かせてください」



続くその言葉に、苛立ちが頂点に達したのを感じた。

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