オフィス・ラブ #another code
畜生!

いっそ割れろという思いで、ガラスのテーブルにライターを叩きつける。


聞きたくない話の次は、思い出したくもない話か。

どこまで嫌なところを突いてくるつもりだ。


けれど確かに、一度は話すと約束したことで。

彼女には、聞く権利のあることで。

結局は完全に正しい大塚にうんざりしながら、どこから話そうかと頭をめぐらせ。

意識してゆっくりと煙草を吸いつつ、語る覚悟を決めた。



俺は、お前を許さない。

そう、つぶやくように吐き出した新庄を、堤は面白そうに見あげた。

その顔は、へえ、と言っているようにも感じられた。

やってみろ、と。


思い知らせてやりたい。


そんな、どす黒い感情が自分の中に湧きあがったことに、戦慄した。

復讐心なんてものは、あらゆる感情の中でも、もっとも醜く、何も生まないものだと思っていたのに。


弔い合戦なんて、そんなつもりじゃない。

ただ、思い知らせてやりたいのだ。

なんでも思いどおりにいくと思うな、と。


慣れない、激しい負の感情におののきながらも、突き動かされるように頭は働いた。

どうしたら、それをできる?

何が一番、こいつに効く?


堤が松岡にしたように、堤の仕事を取りあげてやろうかとも思ったけれど。

それができるほど互いの能力に差はなかったし、結果的に業務の効率を下げるようなマネもできなかった。

なら、業務外だ。

そうだ、コンペだ。


それに思い当たるのに、さして時間は必要なかった。

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