オフィス・ラブ #another code
そろそろ、自分が抜けても大丈夫だろう。

彼女は思った以上に動ける。


以前から評価していたその仕事ぶりは、組んでみて再認識できた。

丁寧だけれど鈍重でなく、あくまでフットワークは軽い。

元々の性格もあるのか、慎重で、けれど要領は悪くないため、結果的にミスがなく仕事が速い。


クライアントの信頼も得ているようだし、この調子でさまざまなメディアを経験させてやれば、いい人材になるだろう。


こんなに早く、このイベントの企画を軌道に乗せられるとは思わなかった。

最悪、当日までもつれこむことも覚悟していたのに。


部屋を出たところでチームメンバーに呼ばれ、手に持ったコンセを置く間もなく、そちらへ向かった。





『結果、出たよ、早めに知りたいだろうと思って』

「助かる、問題はなかったか」

『オールクリア。資料の揃いがほぼ完ぺきだったのも功を奏したね』



監査部の同期から、社内経理の定期監査について、正式な報告に先んじた連絡が来た。

あまりいることのできないデスクで、受話器を肩に挟みながら、別件を済ませるためキーボードを叩く。



「そりゃ、よかった」

『担当者、誰? 次回もぜひ、その人が担当してくれると、こっちも楽なんだけど』



なんとなく手をとめて、その担当者を見た。

このデスクと垂直の向きに並ぶ島の、一番奥の席で、同じように受話器を肩に挟んで電話をしている。

ふいに彼女がほがらかな笑い声を上げて、こちらも少し、つられるように頬が緩んだ。



「大塚っていう、営業員だ」



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