オフィス・ラブ #another code
コンペ? と大塚が訊き返してくる。
そう、とうなずいて、そこで堤を負かしたことを説明した。
「でも、そんなことくらいで…」
彼女が、素直に疑問を口にする。
できたら説明せずに済ませたかったけれど、やはりそれは許されないらしい。
往生際の悪い自分に辟易しながら、その部分について口を開こうとすると。
「新庄はね、卑怯な手を使ったんだよ」
頭に来る声が、それをもぎとった。
いつの間にか入ってきていた堤に、なんでこう次から次へと、とため息をつきたくなる。
堤はしゃあしゃあと、松岡のことは今でも悪いと思っていないと言ってのけた。
そうだろうな、お前なら、そうだろう。
「無能は組織のガン、てね」
笑みを浮かべる姿に、なぜ大塚がここに来たのか、ようやく思い至った。
余計な入れ知恵を責めても堤は動じず、しれっと肩をすくめてみせる。
「じれったかったからさ」
大きなお世話だ、と心では毒づきながらも、実際逃げ回っていた自覚もあり、言い返す言葉も見つからない。
堤が新庄の煙草を一本とって、くわえた。
変わらないその行動に、思わず自然と手が火を差し出す。
ああ、とあきらめが襲った。
なんだか、最悪の展開だ。
こいつの前で、あの話を、大塚に聞かれるのか。
仕方ない。
自分が悪いのだ。