オフィス・ラブ #another code
「私が?」
「そう、頼めるか」
堤のチームに、自分の同期の女子が入ったと知ったのは偶然だった。
さらに偶然、その女子は入社直後から、新庄に控えめとはいえないアプローチを仕掛けて来ていた奴で。
手段は選ばないと腹をくくっていた新庄は、それを利用しない手はないと思った。
「見返りは?」
細く長い煙草を振って、ふふっと笑いながら目をのぞきこんでくる。
当然、そう来るだろう。
暗黙の了解として伝わることを願いながら、共犯めいた思いでまっすぐ見返すと、彼女が少し驚いたように目を見開いた。
「…本気?」
「頼んだぜ」
そうと決まれば、間違っても彼女と一緒のところを誰かに見られるわけにはいかず。
自分から誘ったバーをさっさと後にし、勘定だけは済ませていった。
堤っていう奴を、負かしたいんだ。
そう正直に、コンペの企画案の方向転換を求めた新庄に、メンバーはすんなり同意してくれた。
「いいよ、面白ければ」
「目標がはっきりしてるほうが、達成感あるしね」
「要は最優秀とれば、いいんでしょ?」
グラフィッカー、ライター、メディア局、営業と、様々な部門に散らばった同期で組んだ、新庄を入れて5名のチームで。
刺激が好き、頭と身体を使うことが好き、という彼らは理由も聞かずに乗ってくれた。