オフィス・ラブ #another code
堤の企画には、穴とも言うべき欠点があった。
クライアントという存在を無視していることだ。
いつまで掲示されるかわからない、いつ消えるかわからない広告に金を出すバカはいない。
アートや話題性という意味で、面白がり、出資するクライアントはいるだろう。
けれど純粋に広告という視点からすると、堤の企画は斬新でユニークであるがゆえ、いってみれば邪道すぎた。
そこを狙ってやろうと決めた。
「俺たちはあくまで、広告主が金を出したがり、より多くの人間の目に留まり、話題になることを目指す」
「広告の原点か。向こうをあえて笑いものにするんだな」
「奇抜な企画の弱点だな」
この穴を誰も指摘しなければ、堤のアイデアはおそらく、相当な評価を得るだろう。
(俺が指摘してやるよ)
広告の本来の目的を、俺が審査員に思い出させてやる。
新庄が提示した対抗案のうち、チームメイトと採用を決めたのは、太陽の位置によって内容の変わる、影を使った広告だった。
「つまりさ、このテーマは『環境に配慮した』とは言ってないわけだ」
「環境そのものを広告に取り入れてもいいってことか」
「そう。素材は、立体造形ができさえすればなんでもいい。公園の芝生でも、砂場でも、山そのものでも、ビルの壁でも」
「夜や雨の日は、街中のライトが光源になるわけね、うまいな」
「悪くないだろ。どんな時も、常にあなたのそばに商品が寄りそいますってメッセージだ」
「PVを作ったら? ひとりの男の朝から晩まで、行く先々にこういう広告がさりげなく現れるっていう」
「いいな、映像つくれる奴、いるか?」
「声かけるよ、絶対乗ると思う」
クライアントという存在を無視していることだ。
いつまで掲示されるかわからない、いつ消えるかわからない広告に金を出すバカはいない。
アートや話題性という意味で、面白がり、出資するクライアントはいるだろう。
けれど純粋に広告という視点からすると、堤の企画は斬新でユニークであるがゆえ、いってみれば邪道すぎた。
そこを狙ってやろうと決めた。
「俺たちはあくまで、広告主が金を出したがり、より多くの人間の目に留まり、話題になることを目指す」
「広告の原点か。向こうをあえて笑いものにするんだな」
「奇抜な企画の弱点だな」
この穴を誰も指摘しなければ、堤のアイデアはおそらく、相当な評価を得るだろう。
(俺が指摘してやるよ)
広告の本来の目的を、俺が審査員に思い出させてやる。
新庄が提示した対抗案のうち、チームメイトと採用を決めたのは、太陽の位置によって内容の変わる、影を使った広告だった。
「つまりさ、このテーマは『環境に配慮した』とは言ってないわけだ」
「環境そのものを広告に取り入れてもいいってことか」
「そう。素材は、立体造形ができさえすればなんでもいい。公園の芝生でも、砂場でも、山そのものでも、ビルの壁でも」
「夜や雨の日は、街中のライトが光源になるわけね、うまいな」
「悪くないだろ。どんな時も、常にあなたのそばに商品が寄りそいますってメッセージだ」
「PVを作ったら? ひとりの男の朝から晩まで、行く先々にこういう広告がさりげなく現れるっていう」
「いいな、映像つくれる奴、いるか?」
「声かけるよ、絶対乗ると思う」