オフィス・ラブ #another code
むなしくて、むなしくて、手の中には何も残っておらず、ただ悲しい。

やっぱりダメだ、こんなのは。

こういう感情で動くのは、ダメだ。

こんなやりかたで何かを得るのは、無理だ。


二度とごめんだ、と思った。

もうやらない、こんなこと。


泣きそうな気分でいると、やるじゃん、と入口のほうから柔らかい声がした。

顔を上げると、薄暗いフロアに入ってこようとする堤と目が合った。



「よくも、散々コケにしてくれたね」



言いながら、ゆっくりと新庄の前にやって来る。

いつもと変わらない、涼しげな笑顔で、けれどその目は笑っていない。


突然、頬に衝撃が走り、手の甲で張られたと気づいたのは一瞬後だった。



「聞いたよ、あの子、使ってたって?」



あくまで微笑みを絶やさない顔が、間近で目を合わせてくる。

彼女には、結果が出たら喋ってもいいと言ってあった。

まさかこんなに早くバラすとは予想外だったが。



「やればできるんじゃん、お前。ますます気に入っちゃったよ」



優秀賞おめでとう、と言いながら、拳で新庄の胸をドンと突く。

堤は少しの間、新庄をじっと見つめて、くすっと笑うと。

ふいっと身をひるがえして、フロアを出ていった。


その目は告げていた。

結局お前も、同類じゃん、と。



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