オフィス・ラブ #another code
やられた。
ノートPCを苛立ちに任せて乱暴にデスクに置いたら、備品を粗末にするなと加倉井にクリップボードで頭を叩かれた。
すみませんと謝りながら、次の打ち合わせの資料をプリントアウトする。
堤の奴、と内心で吐き捨てた。
(人で遊びやがって)
あの男は、ちっとも変わっていなかった。
よくも悪くも。
新庄に思うところがあったのは、確かなんだろう。
けれどそれ以上に、大塚に手を出されてはやきもきする新庄を、純粋に面白がっていたに違いない。
何が腹が立つって、実際やきもきしていたことだ。
(くそっ)
複合機から資料をとると、ざっと中身を確認して、会議室へと向かった。
あそこで怒る権利、お前にあるの。
うるさい、と改めて奴を罵りたくなる。
ないことくらい、わかってる。
嫌味ったらしく訊くな、馬鹿野郎。
けれど、堤にそう言われたおかげで気がついたことがあった。
だからこそいたたまれなくて、逃げるようにあの場を後にしてきたのだ。
どうやら自分は、その権利が。
ほしくてたまらないらしい。