オフィス・ラブ #another code


やられた。


ノートPCを苛立ちに任せて乱暴にデスクに置いたら、備品を粗末にするなと加倉井にクリップボードで頭を叩かれた。

すみませんと謝りながら、次の打ち合わせの資料をプリントアウトする。

堤の奴、と内心で吐き捨てた。



(人で遊びやがって)



あの男は、ちっとも変わっていなかった。

よくも悪くも。


新庄に思うところがあったのは、確かなんだろう。

けれどそれ以上に、大塚に手を出されてはやきもきする新庄を、純粋に面白がっていたに違いない。

何が腹が立つって、実際やきもきしていたことだ。



(くそっ)



複合機から資料をとると、ざっと中身を確認して、会議室へと向かった。


あそこで怒る権利、お前にあるの。


うるさい、と改めて奴を罵りたくなる。

ないことくらい、わかってる。

嫌味ったらしく訊くな、馬鹿野郎。


けれど、堤にそう言われたおかげで気がついたことがあった。

だからこそいたたまれなくて、逃げるようにあの場を後にしてきたのだ。


どうやら自分は、その権利が。

ほしくてたまらないらしい。



< 80 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop