オフィス・ラブ #another code
営業の仕事は、派手だったのだと思った。
マーケティングといえば聞こえはスマートだが、要は調査に次ぐ調査に、データ解析に次ぐデータ解析だ。
新庄のいるチームはシステム開発なので少し違うが、地味さは変わらない。
一日のタイムスケジュールも、頭の使いかたも、まったく違う。
いろいろな仕事があるものだなあと実感した。
「WEBのディレクターは、どうでしょう」
「なるほど、その手があったか」
加倉井のデスクに行き提案すると、大柄な身体を揺らして彼がうなずいた。
「フルで入るのは、1ヶ月で十分だと思います。その間、仕組みを触ってもらって、仕様に落としてもらえれば」
「誰かいないか、あたってみる」
システムのインターフェイスの問題だった。
当初から気になっていたことで、機能だけ詰めこんだといった体のこの仕組みは、ありていに言えば、使い勝手が悪かった。
制作に、ユーザーインターフェイスのプロが加わっていなかったせいであることは、ひと目見てわかった。
改良するにあたって、誰もが直感的に扱えるUIに変えるべきだと考え、そのポジションにひとり置きたかったのだが。
元々、社内にはインナー用のシステムを作る人員しかいなかったため、適当な人間が見当たらなかったのだ。
ふと新庄が思いついたのが、WEBコンテンツのディレクターだった。
基幹システムではないが、ユーザーが操作するという意味では同じだ。
特に近年のリッチコンテンツは、よりインタラクティブであることが求められているため、ユーザーの使い勝手を追求することは必至で。
それをこなしてきた人間なら、このシステムの表部分を美しく機能的に整えてくれるだろう。