オフィス・ラブ #another code
「低気圧は去ったみたいだな?」
にやにやと言われて、先日来の自分の荒れっぷりを恥ずかしく思い出す。
そして大きな声では言えないが、別に去ってはいなかった。
つきあいかたを学んだだけだ。
「候補が出たら、俺にも教えてください」
なんとかそれだけ言うと、制作スケジュールを引き直すためデスクに戻った。
最後に大塚を見てから、何日たっただろう。
なんというか、次のステップがわからず、足を踏み出せないような状態で、何か動こうにも、どう動いたらいいのかさっぱりだった。
とりあえず堤の嫌がらせが終わったので、彼女の心配をしなくてよくなったことが、新庄の心を軽くしていた。
――あれは、泊めたわけじゃありません。
遅ればせながら、そうだったのか、と納得する。
泊めずにどうやったらあのシチュエーションになるのかよくわからないが、まあ彼女が言うなら、そうなんだろう。
そのこと自体よりも、わざわざ新庄を探してまで、そう釈明しようとした彼女の思いを、なぜだか嬉しく感じる自分がいた。
サーバ上で共有しているスケジュール表の最新データをローカルに上書きし、開く。
少し眺めたところで、デスクの上に置いた携帯が震えた。
開くと、驚いたことに。
大塚の名前があった。