オフィス・ラブ #another code
そう思って、気がついた。


彼女にとって自分は。

困った時、つい助けを求めるような、そんな存在なのだ。


元々の関係のせいなのか、年齢のせいなのかわからないけれど。

なんとなく、自分より上で。

いざとなったらなんとかしてくれる気がする、そういう相手なんだろう。


申し訳なさが襲った。


そんな相手に無視されて、突っぱねられるというのが、どれだけの不安とストレスか。

新庄だって、上に人間がいる立場だから、少しはわかる。


それでも彼女は、懸命に自分と話そうとし、こんな緊急時には頼ってもくれた。



「悪かった」



言葉が、口をついて出た。

見あげる目が大きく見開かれる。



「…大人げなかったな」



それ以外、表現のしようがない。

大人げなかった。

これ以上なんて謝ったらいいんだろう。


彼女が、ふいに顔をゆがませた。



「大人げないのは、いいんです…」



かすかに震える声に、胸が痛む。

うん、と、それしか言えずにいると、彼女はこぼれる涙を隠すようにうつむいた。



「でも、話を聞いてもらえないのは」



その声が、涙に揺れて消えた。

手の甲で、子供みたいに涙を拭きながら。

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