オフィス・ラブ #another code

もしや自分は。

この男に、とんでもなく大きい借りをつくってしまったのではないだろうか。

なんだかんだ、いろいろなとっかかりをつくってくれたのは、こいつの気がする。


人の金と思って、遠慮もなしに次から次へと飲むかつての同僚をうんざりと眺めた。



「どうせ酔わないんなら、飲むな」

「飲まなかったら、酔えないじゃん」



可能性をつぶすのはよくないよ、とふんぞり返る堤は。

昔、一緒にいるだけで新鮮な刺激をくれた、毒吐きで身勝手で甘ったれの彼、そのままだった。


驚くことに、復活したこの関係を心から喜んでいる自分がいる。

起こったことは消えず、自分たちも、あの頃と同じではないけれど。

それでも、確執は確実にひとつ、過去のものになろうとしている。



反面、面倒なことになったなと憂鬱になりもした。

こいつが統括役を兼任するということは、大塚の直列の上司になるということだ。

今後、何かあるたびに察知され、からかわれるのは避けられないだろう。


まあ引きしめ役のいなくなった6部に、性格はどうあれ取り回しのうまいこいつが入ってくれたのは、とりあえず安心だ。

そう思って自分を慰めることにした。

ふと、嫌味な視線を送ってくる堤と目が合う。



「お前が何考えてるか、わかるよ」

「わかるけど、気にしないんだろ」



よくわかるなあ、と笑いながら、ワインもう一本頼んでいい? と訊いてくる彼に。

金食い虫と自分を呼ばわったチームメイトたちの気持ちに思いをはせた。



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