オフィス・ラブ #another code
空港の案件をとれたと、嬉しそうに大塚が報告してくる。
ほう、と感心した。
つきあいの深い雑誌社とのコラボ企画なので、クライアントが気に入る可能性は高かったものの。
いかんせん雑誌案件としては額が大きすぎて、タイミングを間違えたら突っ返されるのが関の山というものだったからだ。
彼女の営業センスと仕事への熱意を、喜ばしく、誇らしく感じる。
同時に、なんだかなあ、という思いがわいた。
隣に座る彼女が、ひとりの女性なのか元部下なのか、たまにわからなくなる。
たぶん向こうも同じなんだろうと、想像がついた。
3月に入った今日、前回、新庄の都合で流れた山へのドライブに改めてつれ出して、一面に残る雪に声を上げる彼女を、あきれた思いで見つめた。
標高が200メートル上がるたび気温は1度以上下がると、習わなかったのか?
それでも、楽しそうにはしゃぐ姿は心を温めてくれる。
可愛いな、と思った。
「新庄さん、これ」
突然渡されたのは、黒く細長い、一見して上質な紙の箱だった。
何かもらうようなタイミングだっただろうかと首をひねりながらも、受けとる。
確かに今月末は誕生日なんだけれど、まさかそれまでもう会わない気じゃあるまいな。
そう考えていたら、バレンタインです、と説明された。
「ああ」
なるほど。
そういえば先月はずっとごたごたしていて、それどころではなかった。