オフィス・ラブ #another code
隠す気もないので、下心とは言わないであろう願望を露骨にさらして。
うちに寄ってけよ、と誘ったら。
助手席の彼女が、一瞬ぽかんと目を見開いて、少しだけ宙を見つめて考えて、その後、にこりと笑い。
「はい」
快活にそう答えたので、笑った。
まるで、同じオフィスにいた頃に、出かけるぞ、とでも言った時のような返事だったからだ。
明るくて迷いのない、彼女らしいその返答に、やけに楽しい気分で新庄は笑い。
頼もしいことだ、とこんな時にふさわしいのかわからない、妙な感想を抱いた。
自分は彼女を、大事にできるだろうか。
間違うことなく、愛せるだろうか。
たぶん、大丈夫な気がした。
要するに、正直であればいいんだろう?
自分は彼女を、好きなのだ。
それさえ疑わなければ、いいのだという気がした。
正解がわかるのは、きっとずっと先だろう。
それまではとりあえず、思ったようにやってみよう。
ひとりじゃない、ふたりなのだ。
間違えそうになったら、背中を叩いてもらえばいい。
そう考えると、少し気が楽になって。
愉快な気持ちにさえ、なってきた。
自分は彼女と、何を見るだろう。
ひとりじゃ出会えない景色に。
めぐりあえるだろうか。