オフィス・ラブ #another code
「大塚さんには、黙っとくからさ」
本気で聞きたいらしく、珍しく真剣な様子でねだってくる。
ベンチからその顔を見あげ、まあ、もう時効だろうと新庄は口を開いた。
「何もしてない」
「嘘だろ」
「本当だ」
本当だ。
ある意味では。
ごほうびをちょうだい、と会社を出たところで唇を奪われ、少しは場所を選べと路地へ引っぱりこんだ。
新庄の頭を引き寄せるようにして、貪欲に口を合わせてくるのに、感謝の思いをこめて応える。
『どうしたの、これ』
口元に、堤に殴られた跡が赤く残っているのを見つけられ、別にとごまかした。
『どこか入る? うちでもいいけど』
あからさまな誘いに、新庄は少し迷って、結局、当初の予定どおり対応することにした。
『そんな約束は、してない』
嘘はついていない。
堂々としらを切る新庄を、彼女は愕然とした表情で見あげ、やがてにんまりと笑み、ゆっくりと身体を離した。