きみのために -青い竜の伝説ー
11.いつわりの恋人
「これはディアナ様・・とてもよくお似合いで・・。」
ディアナの花のような姿にアイザックも目を丸くしていた。
あまり会う機会のなかったウェルスターも一瞬目を止めていた。
だがすぐにフランツのほうへと歩みを進めていった。
ウェルスターは躍起になってディアナについての捜査をしているという、それらや職務で忙しいのだろう。
ディアナが皇子の隣に部屋を用意されて以降、会うのはこれが初めてだった。
マレーは『いつもそうしてくださったら本当にいいですのに』と笑顔でディアナに進言しながら執務室を出て行った。
これから昼食会についての打ち合わせをするという。
皇子の執務室には、4人が集まった。
フランツは4人だけになると、堅苦しさをとっぱらい、それぞれ適当に座るよう促した。
「ディアナ、おいで。」
フランツは長椅子に座る自分の隣のスペースに、ディアナを呼んだ。
「これからの会だが、レデオン卿には私とウェルスターからすでにディアナの話をしてある。」
「何と伝えられたのですか?」
「そのままだ。伝説の青き竜の者が私を救いにやってきたと言った。卿は受け入れてくれたよ。驚いていたけれどね。」
フランツの横でディアナは驚いていた。
フランツ以外にもこの話をすぐに受け入れられる人がいたということに。
それを見てフランツがくすっと笑う。
「当の本人がそんなに驚いていては、嘘なのかと疑ってしまいたくなるけど、いいのかい?」
ディアナはぶんぶん、大きく首を横に振った。
「レデオン卿にそのお嬢ちゃんが救いかもしれないと言ったのには理由がある。その①、残念なことだが、そのお嬢ちゃんの素性について確たる証拠がいまだに何一つ挙がっていないこと。伝説の救いというのが本当なのか、どこかの手先ってのが本当なのか、どっちの証拠もまだない。」
4人だけになったウェルスターは語調をくだけたものに変えた。
「その②、首飾りについてはザンジュールでは見当もつかない材質らしい、とわかったこと。
その③、今回の会にお嬢ちゃんの出席を是非にもとりつけようとしたのはブリミエル卿だということ。何としてもお嬢ちゃんの存在を確認しようと躍起になっている。ということは、奴の手先ではないのかもしれない。」
お嬢ちゃん、と繰り返す言葉にはとげがあった。ディアナを信じてはいないということからくるのだろう。
ウェルスターの性格をよく知るアイザックは苦笑している。
フランツは表情を変えない。
「はっきりしないことばかりだが、1つはっきりしていることがある。その④、我々は皇子を守り、この国を守らなければならないということだ。その点で、レデオン卿はそのお嬢ちゃんを『救い』として受けいれる理解を示してくれたわけだ。万一、もし、伝説の・・ってことが本当だとしたら、まぁ、こちらにとっても不利ではないしな。」
最後の万一、のところでウェルスターは特に力を入れた。
ウェルスターの言葉から、あまりに信用されていないことが胸に刺さるけれど、証拠もなく信じろというのは難しい話だとディアナも理解できたので、黙って話を聞いていた。
フランツが口を開いた。
「レデオン卿に盛られた毒は、まだ何の毒かわかっていない。
今回も何か仕掛けてくるかもしれない。食事に毒を盛られる可能性もあるので
今回は誰もが自由に選んで食べられるよう立食パーティーにした。
ブリミエルにとって死なれては困る相手もいるはずだ、その者たちまで
危うくなるようなことはしないだろう。
ブリミエルは必ずディアナに接近してくるはず。
私がそばにいるようにしたいが、客人のいる手前、そうできない場合もあるだろう。
その場合はアイザックがディアナのそばにいて気をつけておいてくれ。」
「かしこまりました。」
「ディアナ、私かアイザックからの食事以外、受け取らないように。いいね?」
ディアナはこくり、とうなずいた。
緊張で、握りしめた手のひらが汗ばんでいるようだった。
「ディアナ様、あまりご心配なさらずに。」
アイザックがやさしく声をかけてくれた。
「・・はい。」
声が緊張で震えていた。
「あの夜のことから考えれば当然だが、ディアナは私の溺愛する姫として出席する。」
「・・?!」
ディアナは絶句した。目を丸めてフランツの顔を見た。
「驚くことはないだろう?この間は状況が状況だったからだが、ブリミエルにそう話してしまっている。」
≪で、、溺愛って・・?!≫
「私のそばにいれば問題はない。」
はっきりと断言するフランツ。
≪問題・・大ありじゃない??!!≫
目を丸めたままのディアナに、アイザックが苦笑している。
あの夜、あの時はまさかこんな風に話が進んでいくなんて全く思っていなかったディアナだった。
まさか自分が『救い』としてそばにいようと思うことが、皇子の恋人役になるとか、溺愛される姫がどうのとか、そういう話になるとは全く考えてもいなかった。
皇子の溺愛する姫、という設定に驚いているのはディアナだけだった。
ウェルスターは何とも言えない表情をしている。
むしろ『もうここまで来ているのに何を今さら』と言いたげな・・。
「大丈夫ですよ、しっかり、お役目お努めくださいね。」
アイザックが意味深にほほ笑む。
この役目、なんだかとんでもないことになってるみたい・・ディアナは目の前の3人を繰り返し見つめていた。
ディアナの花のような姿にアイザックも目を丸くしていた。
あまり会う機会のなかったウェルスターも一瞬目を止めていた。
だがすぐにフランツのほうへと歩みを進めていった。
ウェルスターは躍起になってディアナについての捜査をしているという、それらや職務で忙しいのだろう。
ディアナが皇子の隣に部屋を用意されて以降、会うのはこれが初めてだった。
マレーは『いつもそうしてくださったら本当にいいですのに』と笑顔でディアナに進言しながら執務室を出て行った。
これから昼食会についての打ち合わせをするという。
皇子の執務室には、4人が集まった。
フランツは4人だけになると、堅苦しさをとっぱらい、それぞれ適当に座るよう促した。
「ディアナ、おいで。」
フランツは長椅子に座る自分の隣のスペースに、ディアナを呼んだ。
「これからの会だが、レデオン卿には私とウェルスターからすでにディアナの話をしてある。」
「何と伝えられたのですか?」
「そのままだ。伝説の青き竜の者が私を救いにやってきたと言った。卿は受け入れてくれたよ。驚いていたけれどね。」
フランツの横でディアナは驚いていた。
フランツ以外にもこの話をすぐに受け入れられる人がいたということに。
それを見てフランツがくすっと笑う。
「当の本人がそんなに驚いていては、嘘なのかと疑ってしまいたくなるけど、いいのかい?」
ディアナはぶんぶん、大きく首を横に振った。
「レデオン卿にそのお嬢ちゃんが救いかもしれないと言ったのには理由がある。その①、残念なことだが、そのお嬢ちゃんの素性について確たる証拠がいまだに何一つ挙がっていないこと。伝説の救いというのが本当なのか、どこかの手先ってのが本当なのか、どっちの証拠もまだない。」
4人だけになったウェルスターは語調をくだけたものに変えた。
「その②、首飾りについてはザンジュールでは見当もつかない材質らしい、とわかったこと。
その③、今回の会にお嬢ちゃんの出席を是非にもとりつけようとしたのはブリミエル卿だということ。何としてもお嬢ちゃんの存在を確認しようと躍起になっている。ということは、奴の手先ではないのかもしれない。」
お嬢ちゃん、と繰り返す言葉にはとげがあった。ディアナを信じてはいないということからくるのだろう。
ウェルスターの性格をよく知るアイザックは苦笑している。
フランツは表情を変えない。
「はっきりしないことばかりだが、1つはっきりしていることがある。その④、我々は皇子を守り、この国を守らなければならないということだ。その点で、レデオン卿はそのお嬢ちゃんを『救い』として受けいれる理解を示してくれたわけだ。万一、もし、伝説の・・ってことが本当だとしたら、まぁ、こちらにとっても不利ではないしな。」
最後の万一、のところでウェルスターは特に力を入れた。
ウェルスターの言葉から、あまりに信用されていないことが胸に刺さるけれど、証拠もなく信じろというのは難しい話だとディアナも理解できたので、黙って話を聞いていた。
フランツが口を開いた。
「レデオン卿に盛られた毒は、まだ何の毒かわかっていない。
今回も何か仕掛けてくるかもしれない。食事に毒を盛られる可能性もあるので
今回は誰もが自由に選んで食べられるよう立食パーティーにした。
ブリミエルにとって死なれては困る相手もいるはずだ、その者たちまで
危うくなるようなことはしないだろう。
ブリミエルは必ずディアナに接近してくるはず。
私がそばにいるようにしたいが、客人のいる手前、そうできない場合もあるだろう。
その場合はアイザックがディアナのそばにいて気をつけておいてくれ。」
「かしこまりました。」
「ディアナ、私かアイザックからの食事以外、受け取らないように。いいね?」
ディアナはこくり、とうなずいた。
緊張で、握りしめた手のひらが汗ばんでいるようだった。
「ディアナ様、あまりご心配なさらずに。」
アイザックがやさしく声をかけてくれた。
「・・はい。」
声が緊張で震えていた。
「あの夜のことから考えれば当然だが、ディアナは私の溺愛する姫として出席する。」
「・・?!」
ディアナは絶句した。目を丸めてフランツの顔を見た。
「驚くことはないだろう?この間は状況が状況だったからだが、ブリミエルにそう話してしまっている。」
≪で、、溺愛って・・?!≫
「私のそばにいれば問題はない。」
はっきりと断言するフランツ。
≪問題・・大ありじゃない??!!≫
目を丸めたままのディアナに、アイザックが苦笑している。
あの夜、あの時はまさかこんな風に話が進んでいくなんて全く思っていなかったディアナだった。
まさか自分が『救い』としてそばにいようと思うことが、皇子の恋人役になるとか、溺愛される姫がどうのとか、そういう話になるとは全く考えてもいなかった。
皇子の溺愛する姫、という設定に驚いているのはディアナだけだった。
ウェルスターは何とも言えない表情をしている。
むしろ『もうここまで来ているのに何を今さら』と言いたげな・・。
「大丈夫ですよ、しっかり、お役目お努めくださいね。」
アイザックが意味深にほほ笑む。
この役目、なんだかとんでもないことになってるみたい・・ディアナは目の前の3人を繰り返し見つめていた。