きみのために -青い竜の伝説ー
22.伝説の波及②
みなが『救い』を受け入れる方向にある中、
ただひとり、ディアナに真正面から提言する者がいた。
「ディアナ様、いいですか―――」
常に彼女のそばにいたアイザックだった。
「私は皇子とこの国のため、そして、短いながらおそばでお守りしてきた
ディアナ様のため、、恐れながら、申し上げます。」
真剣な瞳でディアナを見上げる。
突然アイザックはディアナの前に片膝をついてこう言いだしたのだった。
「どうしたの?アイザック・・?」
アイザックと親しくなりつつあったディアナはようやく『様』を外して呼ぶことにも慣れ始めたところだった。
きょとん、とするディアナ。しかし、アイザックからは冗談の気配などとても感じられない。
いつもの雰囲気とは違うことにマレーも驚いている。
「心してかかって下さい。」
はっきりとそう告げた。
マレーの何事かと眉根を寄せる表情と
アイザックの真剣な顔をディアナは見比べる。
「伝説の救いのこと?」
「そうです。」
ディアナはマレーに2人にしてほしいと伝えた。
その方がいいと思えたからだった。
「どういうこと?」
マレーが出ていくと、ディアナが聞いた。
「伝説の救いとはこの国とその王に勝利と繁栄、平和をもたらすとされているものです。
あなたがそれだと告げたということは、もしですよ、もし、このシラーとのことで万が一にも
失敗や問題が起これば、それは・・救いだと告げたあなたは、その責任を問われるということです。
そこまで覚悟なさっているのですか?」
厳しい口調だったアイザックは、いったん言葉を切った。
「もちろん皇子はシラーとの紛争で負けることなどありえないでしょう。
万が一、何か失敗が起こったとしても、あなたに責任を問うようなことはしないでしょう、皇子は。」
「だが・・」アイザックは唇をかみしめた。
「だが、ブリミエル卿をはじめ、他の者たちは違う。
救いに期待を持つ国民たちも違うでしょう。裏切られた、とあなたを追い詰めるかもしれない。
一晩で『伝説の救い』という噂はこれほどまでに広まったのですよ?
それほどに国民たちは伝説という魅力の救いに期待を寄せいてるのです。
もしもの時の失望も、どれほどに大きいか・・。
そうなれば皇子は、どこまであなたを守りきれるかわからないのですよ?
そうなるかもしれないと考えての覚悟なのですか?」
ディアナは応えることができなかった。
考えも至らないでいた・・・
人々の期待、失敗、責任、それらに応えられるのかということ・・
皇子のそばにいれば、力になれるのなら、、
それだけだったから・・
皇子のためにそばで力になりたいと思うことは
そんなにも多くの人を巻き込むことだったなんて・・・
フランツ皇子の向かっている世界はなんて大きいことだったんだろう・・
「私、皇子のためになりたくて、それで・・・」
その後が続けられなかった。
アイザックは強く頷いて目をつぶった。
「そうですよね。」
何度も頷く。。
そうするとやっといつものアイザックの表情に戻っていた。
「驚かしてしまいましたね。。あなたはこの国の方ではないから
それらのことは考えが至らなくても当然かもしれませんね。
この苦言もすべて、皇子とあなた様を思って
敢えて言っているのだとお許しください。」
アイザックはそのままの姿勢で続けた。
「伝説の救いとして居るということはそういうことです。」
少しの間を開けて、アイザックは静かに続けた。
「皇子がとてもディアナ様を大切にされておいでだということは
私ども周りにいるものはみなよくわかっております。
ディアナ様と初めてお会いになったときから、皇子の態度や様子はこれまでのものとは
全く違いましたから。」
アイザックは小さな笑みを見せた。
「ディアナ様は皇子のほほえみや優しさをたくさん受けていらっしゃるから
おわかりではないでしょうが、皇子はこれまで『氷の皇子』とさえ
言われていた方なのです。心の底から誰かを想って行動されたことがないと
思われてこられたのです。まさかと思われるでしょう?」
ディアナは眉根を寄せ、「まさか、あんなにあたたかい皇子なのに」とつぶやいていた。
そんなディアナにアイザックは苦笑した。
「それですよ、それは今までなかった皇子の姿だったのです。
ディアナさまと会われてからのフランツ皇子の変わりように、
ウェルスター卿も私も、マレーもレデオン卿も、みな驚いているのですよ。」
「ディアナ様と皇子様を見守っている者として、
少なくとも私はとても心にあたたかいものを感じていました。
だからあなた様には、皇子とこの国のために救いになるということは
そこまでの覚悟が必要なんだということもよくご存じでいただきたかったのです。」
ディアナはアイザックの話す内容で、考えなしの自分がいかに甘すぎるかを
ひしひしと感じさせられた。
しばらくしてアイザックは部屋を後にした。
ディアナは椅子に座ったまま、時間がすぎていくのも感じずにいた。
ただひとり、ディアナに真正面から提言する者がいた。
「ディアナ様、いいですか―――」
常に彼女のそばにいたアイザックだった。
「私は皇子とこの国のため、そして、短いながらおそばでお守りしてきた
ディアナ様のため、、恐れながら、申し上げます。」
真剣な瞳でディアナを見上げる。
突然アイザックはディアナの前に片膝をついてこう言いだしたのだった。
「どうしたの?アイザック・・?」
アイザックと親しくなりつつあったディアナはようやく『様』を外して呼ぶことにも慣れ始めたところだった。
きょとん、とするディアナ。しかし、アイザックからは冗談の気配などとても感じられない。
いつもの雰囲気とは違うことにマレーも驚いている。
「心してかかって下さい。」
はっきりとそう告げた。
マレーの何事かと眉根を寄せる表情と
アイザックの真剣な顔をディアナは見比べる。
「伝説の救いのこと?」
「そうです。」
ディアナはマレーに2人にしてほしいと伝えた。
その方がいいと思えたからだった。
「どういうこと?」
マレーが出ていくと、ディアナが聞いた。
「伝説の救いとはこの国とその王に勝利と繁栄、平和をもたらすとされているものです。
あなたがそれだと告げたということは、もしですよ、もし、このシラーとのことで万が一にも
失敗や問題が起これば、それは・・救いだと告げたあなたは、その責任を問われるということです。
そこまで覚悟なさっているのですか?」
厳しい口調だったアイザックは、いったん言葉を切った。
「もちろん皇子はシラーとの紛争で負けることなどありえないでしょう。
万が一、何か失敗が起こったとしても、あなたに責任を問うようなことはしないでしょう、皇子は。」
「だが・・」アイザックは唇をかみしめた。
「だが、ブリミエル卿をはじめ、他の者たちは違う。
救いに期待を持つ国民たちも違うでしょう。裏切られた、とあなたを追い詰めるかもしれない。
一晩で『伝説の救い』という噂はこれほどまでに広まったのですよ?
それほどに国民たちは伝説という魅力の救いに期待を寄せいてるのです。
もしもの時の失望も、どれほどに大きいか・・。
そうなれば皇子は、どこまであなたを守りきれるかわからないのですよ?
そうなるかもしれないと考えての覚悟なのですか?」
ディアナは応えることができなかった。
考えも至らないでいた・・・
人々の期待、失敗、責任、それらに応えられるのかということ・・
皇子のそばにいれば、力になれるのなら、、
それだけだったから・・
皇子のためにそばで力になりたいと思うことは
そんなにも多くの人を巻き込むことだったなんて・・・
フランツ皇子の向かっている世界はなんて大きいことだったんだろう・・
「私、皇子のためになりたくて、それで・・・」
その後が続けられなかった。
アイザックは強く頷いて目をつぶった。
「そうですよね。」
何度も頷く。。
そうするとやっといつものアイザックの表情に戻っていた。
「驚かしてしまいましたね。。あなたはこの国の方ではないから
それらのことは考えが至らなくても当然かもしれませんね。
この苦言もすべて、皇子とあなた様を思って
敢えて言っているのだとお許しください。」
アイザックはそのままの姿勢で続けた。
「伝説の救いとして居るということはそういうことです。」
少しの間を開けて、アイザックは静かに続けた。
「皇子がとてもディアナ様を大切にされておいでだということは
私ども周りにいるものはみなよくわかっております。
ディアナ様と初めてお会いになったときから、皇子の態度や様子はこれまでのものとは
全く違いましたから。」
アイザックは小さな笑みを見せた。
「ディアナ様は皇子のほほえみや優しさをたくさん受けていらっしゃるから
おわかりではないでしょうが、皇子はこれまで『氷の皇子』とさえ
言われていた方なのです。心の底から誰かを想って行動されたことがないと
思われてこられたのです。まさかと思われるでしょう?」
ディアナは眉根を寄せ、「まさか、あんなにあたたかい皇子なのに」とつぶやいていた。
そんなディアナにアイザックは苦笑した。
「それですよ、それは今までなかった皇子の姿だったのです。
ディアナさまと会われてからのフランツ皇子の変わりように、
ウェルスター卿も私も、マレーもレデオン卿も、みな驚いているのですよ。」
「ディアナ様と皇子様を見守っている者として、
少なくとも私はとても心にあたたかいものを感じていました。
だからあなた様には、皇子とこの国のために救いになるということは
そこまでの覚悟が必要なんだということもよくご存じでいただきたかったのです。」
ディアナはアイザックの話す内容で、考えなしの自分がいかに甘すぎるかを
ひしひしと感じさせられた。
しばらくしてアイザックは部屋を後にした。
ディアナは椅子に座ったまま、時間がすぎていくのも感じずにいた。