落日の楽園(エデン)
部屋に戻ると、ベッドに鞄を投げ、横になる。
しばらく白い天井を見ていたが、やがてふと、視線を側の窓にずらした。
夕空がそこに広がっていた。
『舞、昔、ノストラダムスの大予言ってあったの、知ってるか?
あの、空から降ってくる恐怖の大王って、俺、酸性雨だと思うんだ。
硫酸みたいな雨が、この世界のすべてをを溶かし尽くすんだ』
『やだ、怖いこと言わないでよ』
そのとき、確かに自分はそう言った。
だが、その恐ろしかったはずの酸の雨が、今は胸に焼きついて離れない。
この社会のすべてを溶かしさるかのような雨。
この世界の常識も規範もすべて、溶かしつくす雨。
―降ってもいいよ。
舞は鮮やかな夕空に向かって呟いた。
だけど、その前に教えて欲しい。
明日で、この世界は終わりだよ、って。
そうしたら……
そうしたら?
干上がった大地に撒かれた種が雨を待つように、舞は世界を壊す酸の雨を渇望していた。
それが逃げだと知りながら―