落日の楽園(エデン)
「男の子と付き合うなんて面倒くさい。そんなの、まだまだ先でいいわ」

「それだけ?」

 妙な間をもたせたその言葉に、舞は一瞬、どきりとした。

「そっ、それだけよ。他に何があるっていうの?」

 鮮やかな天然ウェーブの長い髪をかきあげかけた舞に、介弥は視線を向けずに言った。

「舞は都合は悪くなると、髪をかきあげて、時間かせぐよね。

 その間に次に言うこと、考えてるんだ」

 いつの間にか、介弥の駒が動いていた。

 なによ。
 なんでもわかってるようなこと言っちゃって!

 つい舞は怒ったように、介弥を見据える。

 介弥はそれを気にする風でもなく、サイコロを手で弄んでいた。

 いつ頃からか、舞が喧嘩を売っても、介弥は素直にそれを買ったりしなくなっていた。

 いつもさらりと流される。

 それを感じるたび、舞は介弥の方が先に大人になってしまった気がして、悔しかった。

 ―昔は、私があんたの面倒見てやってたのに。
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