落日の楽園(エデン)
「俺、城誠(じょうせい)に行こうと思うんだ」

 ふいに、介弥はそう言った。

 城誠学園は、舞の希望している高校だ。

「く、来ればいいじゃない」

 もう自分は入ってでもいるかのように、舞は威張って言った。

 実際、舞の成績なら、これから先少々手を抜いても、合格は間違いなかった。

 そして― 舞は知っていたのだ。

 介弥の父が、二つも市が離れているにもかかわらず彼を城誠に入れたがっていることを。

「あそこ、勉強もだけど、テニスも強いしな」
「テニス、高校入っても続けるんだ?」

「舞は? やめるのか?」

「……どうしようかな」

 舞は適当にサイコロを投げて、溜め息をついた。

 そこそこ上手いが、特に好きでやっているわけではない。

「いつもそうだな。舞はなんでもできるけど、本当は何も好きじゃないんだ」

 突き放したように呟く介弥の言葉に、カチンときた。

「なによ、それ。さっきから、なんか引っかかるわねぇ。何が言いたいのよ!」
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