落日の楽園(エデン)
 舞は頭を押さえたまま、俯いた。

 しゃがみこんでしまいそうだった。
 泣き出してしまいそうだった。

「どうしたの、舞……」
 亮子が心配そうに問う。

「大丈夫か?」

 やさしく舞に触れていた手が、更にたくましく日に焼けて舞の頭に触れた。

 舞はそっと顔を上げる。
 逆光になっていたその顔を見て、驚いた。

 なんで、あんた眼鏡なんかかけてんのよ!

 思わず叫びそうになったが、言葉を出したら、本当に泣いてしまいそうで、ぐっと堪えた。

「悪い悪い。泣くほど、痛かったんだな」

 まだ、泣いてなんかいないのに、介弥は頭を撫で、そう言った。

 後ろで、介弥の友達らしい少年が小声で言うのが聞こえた。

「春日。なんだよ。すごい美人じゃん。お前、狙ってぶつけたな」

 介弥は照れ笑いをして言った。

「……そうだったりして」

 どうも、と介弥は舞に手を伸ばす。

「はじめまして。
 C組の春日介弥。

 Y市から此処まで通ってるから、もう大変で、今日なんか気合い入りすぎて、二時間も前に付いちゃったんだ」
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