落日の楽園(エデン)
 此処はエデンだ。
 そして、介弥はアダムだ。

 だけど、そう、此処にはイヴがいない。

 舞の耳に、この絵を最初に見たときの介弥の台詞が蘇った。

『この絵、なんか足りないな』

 舞は、ぎゅっと拳を握りしめた。

 介弥には、あのときからわかっていたのだ。
 この絵が何を意味していたのか。

 あのときから、彼は密やかに、逃げ腰な自分を責めていた。

 私は絵の中から逃げ出したイヴ。

 禁断のリンゴに本気で手を伸ばしもせずに、エデンから抜け出して。

 それでもアダムを忘れられない哀れでみっともないイブだった。

 逃げて逃げて。

 自分の造り出したはずの虚構の楽園からも逃げ出して。

 私は一体、何処に行こうというのだろう……!


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