落日の楽園(エデン)
「だって、一日前にわかれば、その日一日は、介弥と一緒にいられるじゃない」

 そう拗ねたように言うと、介弥は苦笑した。

「やっぱり、お前、ちゃっかりしてるよ」

 なによ、ともう一度、昔のように拗ねて見上げると、介弥は安心したように笑ってみせた。

 そうして気づいた。

 さっきまでの無表情は、彼が緊張していたせいだったのだと。

 介弥だって、完璧じゃない。

 なんでもできる、どんなことでも我慢できる神様みたいな人間じゃない。

 それでも今まで、私のために、そうしてそこに居てくれた。

 だから、私は今、言わなくちゃいけない。

 舞は力を込めた瞳で、介弥を見上げた。

 介弥は優しい瞳で、言葉を待っている。

「介弥……介弥、介弥!
 明日……世界が滅びなくてもいい。

 誰になんて、罵られてもいい! 介弥と居たい!」

 一度言葉に出すと止まらなかった。

 その言葉を聞いて、介弥は初めて、子供のような笑みを見せた。

「わかってるよ……舞」

 やわらかな介弥の言葉に、舞の顔から、涙とともに、何かが剥がれ落ちた。
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