落日の楽園(エデン)
「坂口、春日」

 一番近くに居た社会科の大柄な教師が、自分の方が照れたように咳払いをする。

「早く行きなさい。
 坂口、君は春日の従姉なんだろう?

 おじさんが待ってる」

 舞はこの教師が春日の担任だったことを思い出した。

「はい。そうです。従姉なんです」

 そう微笑む舞の手は、春日の手を握っていた。

 彼は最近では見なくなっていた本気で赤くなった顔を見せ、行くぞ、と背を向ける。

 舞は全員に向かって綺麗にお辞儀し、靴を履きかえると、介弥の後を追った。


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