落日の楽園(エデン)
 

 雨は小雨になり、ところどころ、薄雲に日が射していた。

「待ちなさいよ、ちょっと」
「お前、いつまで命令口調なんだよ」

 一生よ、と笑って舞は怒鳴り返す。

 強くなりたい。

 二度と貴方を傷つけないように。
 二度と此処から私が逃げ出さないように。

 それは、皆に羨望の目を向けられるような表向きの強さや格好よさじゃなくて。

 誰に罵られても決して卑屈にならない。
 自分を恥じたりしない。

 胸を張って、好きなものを好きだと言える。

 本当の― 強さ。

 それが介弥にあって、私になかったものだと今ならわかる。

 だからこそ、私は強く彼に引かれていたのだ。

「愛してるよ、舞―」

 いきなりそんなことを言う介弥に、舞は足を止めそうになる。

 勝った、という顔をして笑った介弥を、
「あんた、やっぱり私を負かしたくて、好きだなんて言ってんじゃないの?」
と上目遣いに睨んで見せた。

 介弥は、そうかもな、と余裕の表情で言う。
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