落日の楽園(エデン)
「ところで俺たち何処へ行く気だ。
 タクシーも呼んでないぞ」

「……あんたってどうしてそう後先考えないの?」
「だからお前が必要なんだろ?」

 舞は彼の顔を見上げる。

 たとえ本当に、酸の雨が降り続いても。
 溶け落ちる最後の一瞬まで、私はこうしていよう。

 まるで、乾いた大地に降りそそぐ優しい霧雨― そんな介弥の手に、舞はもう一度、手を伸ばした。



                     了

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