落日の楽園(エデン)
「格好いい男の子ならいっぱい居るけど。
 春日くんってなんていうか、優しいし」

 もう食べることさえ放棄したように、亮子は頬杖をついて妄想に耽っている。

「穏やかっていうか、怒ったの見たことないよね。
 男の子の友達も多いし、感じいいし」

 沙知まで付いて語り出す。

「……でも、怒ったら怖いわよ、あれ」

 ぼそりと呟いた台詞に、沙知たちが猛反撃を始める。

「あんたが怒らせるようなこと言うからでしょ?」

「信じらんない、舞ったらっ。
 春日くんをあんな邪険にするなんてっ」

 彼は絶対舞が好きだよねっ、と熱くなって語っている。

 別に彼が自分を好きでも、こちらがオッケーしないものなら、特に友情にヒビは入らないものらしい、と舞は冷静に二人を見ていた。

「誰でもあんたたちと好みが同じってわけじゃないのよ」

 投げやりに言い、椅子に背を預ける。

 油のきついおかずのラインナップのせいもあるが、舞ももう食欲をなくしていた。

「だって、春日くんだよ? 彼に言い寄られたら、誰だってその気になるって」

 あんたがおかしいっ、と友人二人に指差され、はいはい、と舞は適当に返事をした。
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