同居ノススメ
いよいよ時間は
21時を過ぎた。
慎太郎は、
桃の勤務先も知らなければ、
桃の友人とも、
まだ逢えていない、
実家も家族のことも
よくわからない。
桃のことを知ったつもりで
なにも知らなかったことを
思い知らされる。
不安と心配ばかりが
押し寄せてきて、落ち着かず、
家のなかをウロウロする。
クルマを走らせて
迎えにいこうにも
桃がどこにいるのかさえ、
分からない。
恋人になって、
すっかり浮かれていて、
大切なことを置き去りに
してたことを後悔した。
慎太郎は、
ソファーに体を預けて
目をつぶると、
桃の笑顔ばかりが思い出され、
涙が溢れてきた。
『桃、どこにいるんだ?
お願いだから、帰ってきて。』