今、鐘が鳴る
「……知ってるの?由未さんと私のこと。」
初対面で、私達を似てると言ったのは、碧生くんと泉さんだけ。
もう聞いてるのかしら、と尋ねてみた。
碧生くんは、首をかしげるように苦笑した。
「たぶん。誰にも聞いてないけど、たぶんそうだろうな、って思ってる。おばさまの元旦那様は百合子に全く似てないからね。」
そうね。
「旧華族の橘は戸籍上の父です。本当の父親は竹原だそうです。母にも竹原にも私は確認してませんが。」
まっすぐ碧生くんを見つめてそう言うと、碧生くんは優しく微笑んで、私の頭を撫でてくれた。
「よかったね。今のお義父さんと一緒にいられて。3人の父親の中で、一夫さんが一番優しいイイヒトだと思うよ。百合子が改姓しないですむように、わざわざ橘姓になってくれたんだろ?」
そんな風に言ってもらえて、私は、生まれてはじめて自分がすごく幸運な子のように思えた。
自分が幸せだということを気づかせてくれた人と巡り会えたことこそが、本当の幸せなのかもしれない。
翌日の夕方、碧生(あおい)くんに連れられて大阪へ行った。
旧姓大村知織さんの旦那様、つまり一条 暎(はゆる)さんの所属するIDEA(イデア)という音楽グループのコンサートにご招待していただいた。
……てっきり、どこかの音楽ホールだと思っていたら、会場の名称はホールだけど、まるで体育館。
ステージとアリーナ席とを見下ろすようにぐるりとスタンド席。
私達はスタンド席の端っこ、つまりステージ近くの席に座らせていただいた。
「恭匡(やすまさ)さん達もお近くかしら?」
キョロキョロしてると、恭匡さんと由未さんがいらっしゃった……ご両親、義人さん、希和子ちゃんとご一緒に。
「ごきげんよう。」
恭匡さんと由未さんにそう言って、竹原夫妻と義人さん、希和子ちゃんには会釈をするに留めた。
まさがご一家で来られるとは思わなかったので、驚いた。
「みんな、って、こういう意味だったのね。」
そっと耳打ちすると、碧生くんはひきつり笑いをした。
「そうみたい。俺も、なんか嫌な予感してきた。」
……あ……そう言えば、ゲイの家庭教師……思わずキョロキョロしてると、知織さんが来た。
「知織!光人(りひと)は?」
碧生くんが尋ねる。
「両親に預けて来ちゃった。」
……子供さんの名前……りひと?……キラキラネーム!?
知織さんの知性と言うかイメージに合わないお子さんのお名前に、心の中で首をかしげた。
「じゃあ、知織は1人?」
碧生くんの問いに、知織さんは首を横に振った。
「両親は来ないけど、叔父のお寺関係が4人。企画でお寺にお世話になったことがあって。IDEA全員と仲良しなの。」
そんな話をしていると、周囲がざわついた。
初対面で、私達を似てると言ったのは、碧生くんと泉さんだけ。
もう聞いてるのかしら、と尋ねてみた。
碧生くんは、首をかしげるように苦笑した。
「たぶん。誰にも聞いてないけど、たぶんそうだろうな、って思ってる。おばさまの元旦那様は百合子に全く似てないからね。」
そうね。
「旧華族の橘は戸籍上の父です。本当の父親は竹原だそうです。母にも竹原にも私は確認してませんが。」
まっすぐ碧生くんを見つめてそう言うと、碧生くんは優しく微笑んで、私の頭を撫でてくれた。
「よかったね。今のお義父さんと一緒にいられて。3人の父親の中で、一夫さんが一番優しいイイヒトだと思うよ。百合子が改姓しないですむように、わざわざ橘姓になってくれたんだろ?」
そんな風に言ってもらえて、私は、生まれてはじめて自分がすごく幸運な子のように思えた。
自分が幸せだということを気づかせてくれた人と巡り会えたことこそが、本当の幸せなのかもしれない。
翌日の夕方、碧生(あおい)くんに連れられて大阪へ行った。
旧姓大村知織さんの旦那様、つまり一条 暎(はゆる)さんの所属するIDEA(イデア)という音楽グループのコンサートにご招待していただいた。
……てっきり、どこかの音楽ホールだと思っていたら、会場の名称はホールだけど、まるで体育館。
ステージとアリーナ席とを見下ろすようにぐるりとスタンド席。
私達はスタンド席の端っこ、つまりステージ近くの席に座らせていただいた。
「恭匡(やすまさ)さん達もお近くかしら?」
キョロキョロしてると、恭匡さんと由未さんがいらっしゃった……ご両親、義人さん、希和子ちゃんとご一緒に。
「ごきげんよう。」
恭匡さんと由未さんにそう言って、竹原夫妻と義人さん、希和子ちゃんには会釈をするに留めた。
まさがご一家で来られるとは思わなかったので、驚いた。
「みんな、って、こういう意味だったのね。」
そっと耳打ちすると、碧生くんはひきつり笑いをした。
「そうみたい。俺も、なんか嫌な予感してきた。」
……あ……そう言えば、ゲイの家庭教師……思わずキョロキョロしてると、知織さんが来た。
「知織!光人(りひと)は?」
碧生くんが尋ねる。
「両親に預けて来ちゃった。」
……子供さんの名前……りひと?……キラキラネーム!?
知織さんの知性と言うかイメージに合わないお子さんのお名前に、心の中で首をかしげた。
「じゃあ、知織は1人?」
碧生くんの問いに、知織さんは首を横に振った。
「両親は来ないけど、叔父のお寺関係が4人。企画でお寺にお世話になったことがあって。IDEA全員と仲良しなの。」
そんな話をしていると、周囲がざわついた。