今、鐘が鳴る
コンサートはすごい盛り上がりだった。
大きな空間を埋め尽くす圧倒的なパワーとカリスマ。
感動と涙のみならず、コントのような笑いもあり、クラッシックの楽器での演奏もあった。
こんなにも広い空間で、マイクやスピーカーを通さない笛やチェロの音は冬山の灯りのように温かく感じた。
一条さんは35歳ぐらいだと思うのだけど、元気に走り回り、頭から高い音を出し、まるで少年のようだった。
知織さんは、とろけそうな瞳で終始見つめていた。
一条さんは、自分がメインボーカルな曲のたびに知織さんにアピールしているように感じた。
ロマンティックな歌詞が切なくて、私は何度ももらい泣きしてしまった。
ただ、由未さんは……総立ちのホールで1人、立たなかった。
顔を輝かせて、心から楽しんでいるのは伝わってきたので、たぶんお身体の具合がよくないのだろう。
恭匡さんもご両親も義人さんも心配してらっしゃるのが手にとって見えた。
私の出る幕じゃない。
「素敵なコンサートに呼んでいただいて、ありがとうございました。私、何度も泣いてしまいましたわ。」
終演後、知織さんにそうご挨拶した。
「ありがとう。もしよろしければまた是非いらしてください。」
まだ真っ赤な瞳の知織さんにそう言っていただいた。
社交辞令じゃなくてまた来たい、って思ったのだけれど、伝わったかしら。
思わず碧生くんに助けを求めようとする。
あら?
こういう時、いつも私のそばにいてくれるはずの碧生くんの姿がなかった。
キョロキョロ見回すと、碧生くんは既に出口に向かっていた竹原夫妻と義人さんたちにわざわざ挨拶に行ったらしい。
……そこまでしなくてもいいのに。
「さすが碧生くん。社交的ね~。気分は親戚?」
お坊さんにご挨拶をして見送った恭匡さんと由未さんが戻ってきた。
「由未さん、お身体おつらいの?ずっと座ってらしたけど……」
そう聞くと、由未さんは慌てて手を振った。
「大丈夫大丈夫!でも立ってると、つい曲に合わせて飛んだり跳ねたりしちゃうから。衝撃でまた肺出血したら嫌やし、おとなしくしててん。心配かけてごめんね、ありがとう。」
謝ることじゃないのに……。
「さっき、何、話してたの?竹原達と。」
帰りの車の中で、そう聞いてみた。
碧生くんは、前を見たままちょっと笑った。
「気になる?別に普通に挨拶しただけだよ。去年の結婚式で顔合わせてるし、やすまっさんと由未にお世話になってるし。」
「……そう。」
何となく釈然としない私に、碧生くんは苦笑した。
大きな空間を埋め尽くす圧倒的なパワーとカリスマ。
感動と涙のみならず、コントのような笑いもあり、クラッシックの楽器での演奏もあった。
こんなにも広い空間で、マイクやスピーカーを通さない笛やチェロの音は冬山の灯りのように温かく感じた。
一条さんは35歳ぐらいだと思うのだけど、元気に走り回り、頭から高い音を出し、まるで少年のようだった。
知織さんは、とろけそうな瞳で終始見つめていた。
一条さんは、自分がメインボーカルな曲のたびに知織さんにアピールしているように感じた。
ロマンティックな歌詞が切なくて、私は何度ももらい泣きしてしまった。
ただ、由未さんは……総立ちのホールで1人、立たなかった。
顔を輝かせて、心から楽しんでいるのは伝わってきたので、たぶんお身体の具合がよくないのだろう。
恭匡さんもご両親も義人さんも心配してらっしゃるのが手にとって見えた。
私の出る幕じゃない。
「素敵なコンサートに呼んでいただいて、ありがとうございました。私、何度も泣いてしまいましたわ。」
終演後、知織さんにそうご挨拶した。
「ありがとう。もしよろしければまた是非いらしてください。」
まだ真っ赤な瞳の知織さんにそう言っていただいた。
社交辞令じゃなくてまた来たい、って思ったのだけれど、伝わったかしら。
思わず碧生くんに助けを求めようとする。
あら?
こういう時、いつも私のそばにいてくれるはずの碧生くんの姿がなかった。
キョロキョロ見回すと、碧生くんは既に出口に向かっていた竹原夫妻と義人さんたちにわざわざ挨拶に行ったらしい。
……そこまでしなくてもいいのに。
「さすが碧生くん。社交的ね~。気分は親戚?」
お坊さんにご挨拶をして見送った恭匡さんと由未さんが戻ってきた。
「由未さん、お身体おつらいの?ずっと座ってらしたけど……」
そう聞くと、由未さんは慌てて手を振った。
「大丈夫大丈夫!でも立ってると、つい曲に合わせて飛んだり跳ねたりしちゃうから。衝撃でまた肺出血したら嫌やし、おとなしくしててん。心配かけてごめんね、ありがとう。」
謝ることじゃないのに……。
「さっき、何、話してたの?竹原達と。」
帰りの車の中で、そう聞いてみた。
碧生くんは、前を見たままちょっと笑った。
「気になる?別に普通に挨拶しただけだよ。去年の結婚式で顔合わせてるし、やすまっさんと由未にお世話になってるし。」
「……そう。」
何となく釈然としない私に、碧生くんは苦笑した。