今、鐘が鳴る
開始から2時間が経過すると、会の雰囲気は一転した。
みんな、目が据わってる。

飲み放題だからって、ビールを浴びるほど飲んでいるようだ。
教授は日本酒、他の女子は甘いカクテルやソフトドリンクも飲んでいるようだった。

途中で一度、私はお手洗いに立った。
すかさず、泉さんも立ち上がったのが見えた。

私は慌てて個室へ逃げ込んだ。
どうしようどうしようどうしよう!
しばらく個室でオロオロしていたけれど、廊下に他のかたがいらした気配を感じたので、すぐに飛び出した。

「全日本選抜2着おめでとうございます。では!」
それだけ言って、逃げるように座敷に戻った。

「百合子!待てや!」
泉さんに小声で呼ばれたけど、振り向かなかった。

……その後、通路の向こうから延々とやぶにらみされてたけど。


21時に教授が辞去した。
私もご一緒に帰るつもりだったのだが、泉さんが様子を見張ってて腰を浮かしたのが見えたので、予定変更。

その場にまだほとんどの女子も残るようだったので、私も座ったまま動かなかった。
そのまま二次会状態になった。

「二次会って場所、移さないんですか?カラオケとか……」
幹事の先輩にそう聞くと、

「カラオケは終電がなくなってからやな。」
と言われた。

朝まで遊ぶつもりなのだろうか。
さすがにそれには付き合いきれない。

泉さん、早く帰らないかな。
根比べみたい……。

22時、泉さん達の会はお開きになったようだ。
あっちもずいぶんと賑やかな会だったなあ……と、空いた座敷を見た。
よかったぁ。

でも、すぐに泉さんだけがお店に戻ってきた。
嘘でしょ……。

泉さんは、私達のテーブルの隣に衝立(ついたて)1枚挟んで座った。
今度は、目が合うのみならず会話まで筒抜け。

……私は、放置してぬるくなり炭酸の抜けた発泡酒を一息にあおった。

しばらくすると、ゲームのようなモノが始まった。
指を立てて数字を言い合ったり、しりとりじゃないけれどよくわからない法則性の言葉を言い合ったり。

私はルールも知らないので参加しなかったが、ミスった人は罰ゲームを課せられた。
最初はお酒の一気飲みとか、デコピンとか、しっぺだったのが、次第にエスカレートしてきた。
そうなると学生の悪のりは止まらないらしい。
気づけば、罰ゲームが主体になっていた。

「王様ゲームにしよー。それなら橘さんも参加できるやん!」

王様ゲーム?
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