今、鐘が鳴る
「碧生くんを信じたいの!嫌なところなんか見たくもないの!」
そのまま接続を切っちゃおうかとも思ったけれど、碧生くんが泣きそうな顔をしていたので切れなかった。
『……百合子。信じることと、疑いから目を背けることは、違うよ。ちゃんと見て。ちゃんと話して。ちゃんと解決して、それから俺を信じて。』
そのプロセスを面倒くさがっていてはいけないのだろうけれど……私は今までそんな風に人と向き合って関係を構築してきたことがなかった。
常に、嫌なところは見ないように生きてきた。
私と一緒にいる時だけ大事にしてくれればそれでいいと、諦めていた。
離れている時のことまで心配も束縛もできなかったから……碧生くんを独り占めにしていいと言われても、具体的にどうすればいいのかよくわからない。
物理的な距離は如何ともしがたいし、碧生くんはかっこよくて誰に対してもフレンドリーでモテるに決まってる。
まさか他の女性と話すな、なんて言えないし。
「大村さんとも仲いいのね。」
イロイロ考えて、やっと紡ぎ出した言葉はコレだった。
今日の私の一番のジェラシー。
碧生くんはホッとしたように言った。
『やっと言ってくれた。……知織は完全に安全牌だから安心して。彼女は去年結婚して出産してね。1年生は忙しいから、シッターさんの都合つかない日は由未と俺が子守することもあるんだ。理解した?』
えええええ!?
「結婚!?出産!?どなたと結婚されたの?」
真面目を絵に描いたような優等生の大村さんが……。
『本人の許可を得たから言うけど、内緒ね。芸能人。IDEA(イデア)ってグループの一条 暎(はゆる)って人。』
知ってる!
……義人さんがけっこう好きで、よく車で流してた……
「知らなかったわ。それは確かに大変ね。」
『でも俺の潔白は証明できたでしょ?ね?ね?』
いや、大村さんのことがショックすぎて、それ、今はどうでもいいかも……。
『それにね、最近聞いて驚いたんだけど、知織の従兄だったんだよね……俺の家庭教師。』
「え!?ゲイの!?」
碧生くんは苦笑いした。
……そういえば、同じ「大村」姓だけど。
偶然というか、ご縁というか……。
『そういうことだから。百合子がやきもきすることは何もないからね。』
そうかしら。
まだ納得してなさそうな私に、碧生くんは苦笑した。
『第一、今さら他の女の子に手を出そうものなら、由未がめちゃめちゃ怒るよ。』
それはそうかもしれない。
やっとうっすらと微笑した私に、碧生くんはホッとしたようだ。
「……ごめんなさい。ありがとう。」
せっかく誘ってくれたのに、変に気を遣わせてしまった……。
碧生くんはふっと優しく笑ってくれた。
『謝ることじゃないよ。まだまだコミュニケーション不足だよね、俺たち。もっと、気持ち、いっぱい伝えてくれたらうれしい。俺も何でも言うから。ね。』
私はカメラを見つめて、深くうなずいた。
そのまま接続を切っちゃおうかとも思ったけれど、碧生くんが泣きそうな顔をしていたので切れなかった。
『……百合子。信じることと、疑いから目を背けることは、違うよ。ちゃんと見て。ちゃんと話して。ちゃんと解決して、それから俺を信じて。』
そのプロセスを面倒くさがっていてはいけないのだろうけれど……私は今までそんな風に人と向き合って関係を構築してきたことがなかった。
常に、嫌なところは見ないように生きてきた。
私と一緒にいる時だけ大事にしてくれればそれでいいと、諦めていた。
離れている時のことまで心配も束縛もできなかったから……碧生くんを独り占めにしていいと言われても、具体的にどうすればいいのかよくわからない。
物理的な距離は如何ともしがたいし、碧生くんはかっこよくて誰に対してもフレンドリーでモテるに決まってる。
まさか他の女性と話すな、なんて言えないし。
「大村さんとも仲いいのね。」
イロイロ考えて、やっと紡ぎ出した言葉はコレだった。
今日の私の一番のジェラシー。
碧生くんはホッとしたように言った。
『やっと言ってくれた。……知織は完全に安全牌だから安心して。彼女は去年結婚して出産してね。1年生は忙しいから、シッターさんの都合つかない日は由未と俺が子守することもあるんだ。理解した?』
えええええ!?
「結婚!?出産!?どなたと結婚されたの?」
真面目を絵に描いたような優等生の大村さんが……。
『本人の許可を得たから言うけど、内緒ね。芸能人。IDEA(イデア)ってグループの一条 暎(はゆる)って人。』
知ってる!
……義人さんがけっこう好きで、よく車で流してた……
「知らなかったわ。それは確かに大変ね。」
『でも俺の潔白は証明できたでしょ?ね?ね?』
いや、大村さんのことがショックすぎて、それ、今はどうでもいいかも……。
『それにね、最近聞いて驚いたんだけど、知織の従兄だったんだよね……俺の家庭教師。』
「え!?ゲイの!?」
碧生くんは苦笑いした。
……そういえば、同じ「大村」姓だけど。
偶然というか、ご縁というか……。
『そういうことだから。百合子がやきもきすることは何もないからね。』
そうかしら。
まだ納得してなさそうな私に、碧生くんは苦笑した。
『第一、今さら他の女の子に手を出そうものなら、由未がめちゃめちゃ怒るよ。』
それはそうかもしれない。
やっとうっすらと微笑した私に、碧生くんはホッとしたようだ。
「……ごめんなさい。ありがとう。」
せっかく誘ってくれたのに、変に気を遣わせてしまった……。
碧生くんはふっと優しく笑ってくれた。
『謝ることじゃないよ。まだまだコミュニケーション不足だよね、俺たち。もっと、気持ち、いっぱい伝えてくれたらうれしい。俺も何でも言うから。ね。』
私はカメラを見つめて、深くうなずいた。