君を選んだから
兄貴が助教授になるのはすごいことだと思うし、弟として嬉しい。

だけど、どうしても気持ちがローになってしまうのは、彼女に会えなくなることが堪えてるからなのかな。


近くにいようが、遠くにいようが、どっち道、どうすることもできないのに、俺は何を今さら凹んでるんだろう。

気持ちを口にすることすら許されないって、何年も前からわかってるだろ。

忘れられるいい機会じゃん。

だから、もっと喜べよ..........


「須賀くん、今日、元気ないね。何かあった?」

「う、ううん、大丈夫。」

「ホントに?」

「ホント。」

「嘘つかなくていいよ。」

「..........。」

「私にはわかっちゃうんだから。」

「マジ?」


少し上目使い気味になって、じ〜っと俺を見つめる顔には、わかりやすく「心配」って書いてある。

それ見ちゃったら、嘘もつけなくなるだろうが、まったく。


こいつはいつも、俺をほどよく気にかけてくれる。

寂しい時、落ち込んだ時、悩んでる時、俺にとって丁度良い程度に構ってくれて、決して押し付けじゃない優しさで、一人じゃないっていう安心感をくれる。


そして、何故だか何でも受け入れてくれる気がして、誰より頼りにしてしまう。

こいつがいてくれるだけで、何となく前向きになれる.......みたいな?


だから、ちょっとだけ、こいつになら話してもいいかなっていう気もして来る。

本当のことを言ったら、どんな反応されるかわからないけど。

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