君を選んだから
「あのさ、実は兄貴が沖縄の大学の助教授になるって決まったんだ。」

「えっ、すご〜い!! ホント?」

「うん。だから、兄貴と陽奈さん、年明けたら、沖縄行っちゃうんだ。」

「あ...........そ、そうか。そうだよね。嬉しいことだけど、寂しくなるね。」

「でも、兄貴はやりたがってた仕事だから。陽奈さんも、兄貴の仕事、全面的に応援するタイプだし、喜んでるんじゃない?」

「そう。でも..........。」

「でも?」

「あっ、ううん。ごめん、何でもない。お兄さん、本当に良かったね。」

「うん、ありがとう。そのうち、みんなでお祝いするからさ、お前も来て。」

「うん。」


..........待てよ。

今のこいつの反応って、もしかして、とっくに、気が付いちゃってるっていうことなのかな?


無理もないか。

この前、うちに来た時、あんなところ見せちゃったし、昨日も弱気になって、つい匂わすようなこと言っちゃったし、少し勘を働かせれば、何となく話が繋がっちゃうよな。


って言うか、俺はあいつに早く気付いてもらいたいのか?

よく考えたら、バレバレな行動ばっかりしてないか?


あぁ、何か、だっせー。

みっともねー。

いつまでも諦められないで何年も引きずってるだけでもキモいのに、自らバラすようなことして慰めてもらおうとか、どう考えても女々し過ぎるだろ..........

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