君を選んだから
でも、あいつの俺に対するスタンスは、まったく変わってない気がする。

それどころか、最近って、前にも増して俺を心配してくれてないか？


兄貴の嫁さんに惚れてるだなんて、バカにされてもおかしくないのに、あいつは一緒になって悩んでくれているようにすら感じる。

「力になれたらなりたい」なんて可愛いいことまで言ってくれたし、何があっても受け入れてくれる系のオーラだって、相変わらず、全開だ。


もし本当に気付いてるなら、こんな面倒なことに関わりたくないって思うのが普通だろう。

なのに、俺がちょっとでも暗い顔をしてれば、すぐに察知して、優しい言葉をかけてくれる。

気付いてることは直接、口にせず、自分は何があっても味方でいることだけを伝えようとする。

本当にいい奴だと思うし、俺のせいでそこまで気を使わせちゃってるのが申し訳なくなって来る。


元はと言えば、俺がニセ彼女なんて頼んじゃったからいけなかったのかな？

頼んだ意味に気付いて、変な責任感じてるとか？


だとしたら、早目に解放してやった方がいいのかも。

あいつにだって好きな人がいるのに、いつまでもこんな実りのない恋愛沙汰に付き合わせてるのも悪いだろう。


絶対、幸せになってほしいし、あいつには笑っててほしい。

俺の分まで、思い切り。

入社してからずっと、俺はいつもそばにいてくれるあいつの笑顔に救われて来たんだから。

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