君を選んだから
そう思いながらも、その週末、早速、あいつを家に呼んでしまった。

母親がみんなでお祝いをしたいというから誘ったんだけど、「みんな」の中に普通にあいつが含まれていることが、何となく嬉しい。


そもそも、ニセ彼女なんてバカげたことを思い付いたのは、陽奈さんを含む家族からのプレッシャーを跳ね除けるためだった。

あいつを連れて来れば、俺が一向に恋愛しようとしないことをイジられることもないし、相手をしてもらえば、手持ち無沙汰になった時、ついつい陽奈さんを目で追ってしまうこともなくなる。

そのくらいの軽いノリだった。


だけど、予想以上に陽奈さんが喜んでることが辛くなって、思わず子供っぽい行動を取ってしまった。

よく考えたら、その時点であいつに引かれてもおかしくなかったと思う。

意味もわからず、突然、軽くキレて見せたんだから。


自分で言うのも何だけど普段の俺はそういうキャラじゃないし、何でもないように振る舞いつつも、あいつは相当驚いてたに違いない。

実際、あの辺りから何かあるって考えてたんだろうな。

聞ける状況じゃないから、無駄に悩ませちゃったんだろうし。

一方的に巻き込んでんじゃん。

俺って、最悪だな..........


それでも、うちに来るのが楽しいって言ってくれるんだから、あいつは本当に優しい。

悪いことしちゃったかもしれないけど、最高のニセ彼女だったんじゃないかと思う。

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