君を選んだから
送りがてら、ゆっくり話をするつもりだったから、今日はアルコールを我慢しておいた。

キーを片手に車で送ってやると言うと、あいつは目を丸くして驚き、喜んだ。

ついでに帰りがけに母親が何処ぞで手に入れて来た何とかプリンを持たせてやると、そこからさらにテンションを上げていた。


こいつはこういう単純なところがカワイイよな。

男としては、嬉しい時には嬉しい顔を素直に見せてほしいし。


「このプリン、限定だし、並ばなきゃ買えないんだよ。すごく嬉しい。」

「そうなんだ。何かそのレストランのオーナーの奥さんが、お母さんのお客さんらしくて、それ、うちにたまにある。」

「ホント? ここって、なかなか予約取れないんで有名なんだよ。だから余計にテイクアウトのプリンが人気なの。」

「ふ〜ん。そこ行ってみたい?」

「そりゃ、行けるなら行きたい。」

「じゃ、行く?」

「へ?」

「誕生日まだだよね。それまでに好きな人と上手く行かなかったら、仕方ないから、俺が連れて行ってあげる。」

「.......ホントに? いいの?」

「うん。ニセ彼女のお礼もしたいから丁度いい。あ、でも、俺よりも好きな人と行けるよう頑張れよ。あくまでも、そっち優先だからね。」

「わかってるよ。でも、ありがとう。」


それだけ言うと、あいつは窓の方に顔を向け、ウルっとしながらしばらく黙っていた。

あれ? そんなに嬉しいのかな。

好きな人じゃなくて俺でいいのか?

勢いで誘っちゃった身としては、そういうのは大変喜ばしい反応だけど。

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