君を選んだから
「ところで、お前、その後、その人と何か進展あった?」

「え? あぁ、うん。有るような、無いような..........?」

「それじゃわかんねーよ。」

「じゃあ、無い。」

「マジか?」

「そういう自分は?」

「あぁ、俺? 俺は..........。」


今日は全部話すつもりで車を選んだのに、一瞬、動揺してしまった。

でも、こいつになら言ってもいいよな。

絶対、大丈夫だから。

そう思い直して、もう一度、覚悟を決めた。


「あのさ、お前、もう気付いてるよね? 俺の好きな人。」

「へっ!?」

「やっぱり。」

「..........あ、でも、間違ってるかもしれないし。」

「いや、間違ってないと思うよ。驚いただろ?」

「..........。」


やっぱりバレてたとわかったら、身体がカァっと熱くなった。

だけど、その一方で、とっくにバレてたにも関わらず、こいつはずっとそばにいてくれたんだと思うと、自分でも驚くほど冷静でいられた。

だから、話してみようという勇気が、少しずつ湧いて来た。


「うちってさ、兄貴と五個も離れてるじゃん? しかも、兄貴は小さい頃から何やらせても努力で何とかしちゃう人でさ。俺がちょっとやそっと頑張ったところで、勝てるものって何にもなかったんだよね。」

「ふ〜ん。」

「だけど、兄貴はいつも優しくてさ。俺がどんなワガママ言っても、自分が我慢してまで全部聞いてくれたんだ。」

「何かわかるな。お兄さん、すごくあったかい感じの人だもんね。」

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