君を選んだから
匡史に頼まれ、とりあえずオープンから三日間は、毎日売り場に立つ約束をしている。

通常なら新店オープンと言っても、初日に行って商品補充とかレジのサッカーなんかを手伝い、その後もしばらくの間は、小まめに追加発注すべき商品をチェックしに行ったり、売れ筋商品の相談をしたり........くらいの応援が多いんだけど。


今回のオープンに当たり、我が社の商品を少しでも多く売るために、匡史とちょっと戦略を立ててみた。

で、どうせなら高価格帯商品で、他店とは変わった勝負をしてみようということになったのだ。


この手のセール時は、大抵の場合、うちの商品を含めた制度化粧品全体の値引き率が上がる。

と言っても、今時、ドラッグストアでは毎日3割引が当たり前。

ただ値引きしているだけでは、BA(ビューティーアドバイザー)が常時着いている化粧品専門の他社には勝てない。


実際、スーパーで化粧品を購入する層には、洗剤やシャンプーなどで親しみと信頼のある我が社の商品を求めて来てくれる消費者も多いのに、最後の最後で他社BAに言いくるめられ、うちの商品を断念してしまうパターンがよく見受けられる。

ならば、他店ではアドバイザーのつかないうちの商品を、お前が即席BAになって売りまくれというのが匡史の作戦だ。


主任にも相談したところ、注目店だし、どこまで売り上げが伸びるか試しにやってみようと大ノリ気。

果てには所長にまで話が届き、私はめでたくグリーンピア潮台店のオープ二ングセールに派遣されることになった。

< 129 / 188 >

この作品をシェア

pagetop