君を選んだから
こんな電話くれるなんて、相当なプレッシャーなんだろう。

無理もないよね。

この若さで、大型モールに位置する話題の注目店のチーフなんだもん。


大丈夫かなってさすがに心配になったけど、翌朝の朝礼で見た匡史はそんな弱さを微塵も感じさせないくらい、しっかりとしていた。

不安そうな新人パートさんたちに声をかけ、何十人もの取り引き先に挨拶をして回り、堂々と部門朝礼を取り仕切る姿は頼もしい限りだ。

そして、それこそ、本当に惚れちゃいそうな勢いでカッコ良い。


さあ、匡史に負けないよう、私も頑張らなくちゃ。

北斗七星のマークと「seven stars」のブランドロゴが入ったエプロンを締め、即席のBAに変身すると、何だか自然と気合いも入って来る。


でも、今後、ここの定着になるらしい他社のBAさんたちのガッツリメイクに比べると、普段より濃いめにしたはずの私のメイクも、てんで地味でボヤっとしたものに見えて来る。

いや、でも、違うでしょ。

早速、そんなことで挫けてどうする。

あっちはその道のプロフェッショナルなんだから、そこじゃなくて売り上げで勝負しなさい、あおい!!


そう自分に言い聞かせていると、何だかイイ匂いが漂って来て、振り向くと妙にセクシーなスーツ姿のお兄さんが微笑んでいた。

えっ? 誰? と思う間もなく、彼は名刺を差し出し、ホスト級のキラメキを惜しみなく放出している。

ドキドキしながら名刺を受け取ると、そこには一目でわかる化粧品を専門とする同業他社の社名とマークが記されていた。

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