君を選んだから
パタパタと売り場の方からバックヤードに向かって来る足音が聞こえて来た。

すると、さすがに匡史もパっと手を離した。


勢いよくバックヤードの扉が開いて、高校生らしきバイトの女の子が飛び込んで来た。

見ると、必死の形相で息を切らしている。


「すいませ〜ん。seven starsのお姉さん、帰っちゃいましたか? お客さんが取り寄せできるか聞きたい商品があるって言ってるんですけど〜。」

「あっ、はい!! まだいます。今、行きます。」


わぁ、ビックリした。

すっごい緊張した。

うそぉ、もう、これからどうしよう。


このお客様が来てくれなかったら、あの後、私はなんて言えば良かったの?

だいだい意味がわからないし、突然、こういうのは無しだよ...........


すぐ売り場に出て、ドキドキを何とか治めながら、お客様の話を聞いて客注の手続きを取った。

でも、この後、どんな顔して、バックヤードに戻ればいいのよ。


あいつ、普段から突拍子もないことするからなぁ。

私の気も知らないで、案外、ケロっとしてたりするのかもしれないけど、人の上に立つ立場なんだから、せめて場所をわきまえなさいって。


だけど、弱ってるのは本当だろうし、疲れ切ってるのも見ればわかる。

今の意味も聞きたいし、いろいろ愚痴も聞いてあげたい。

本当に一回、二人でご飯行ったほうがいいな...........

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