君を選んだから
多分、私たちの関係が歪んでいる一番の原因はここにある。

素直で優しい須賀くんは、まだ気付いてないのかもしれないけど。


「須賀くんがどんなに強く思っても、絶対に陽奈さんに想いが届くことはないって知ってるんだよ、私。」

「..........。」

「もちろん、普通に考えて言える訳がないし、須賀くんの性格を考えれば、言うチャンスがあっても言わない。陽奈さんだって同じでしょ。」

「そうだけど..........。」

「だから、心のどこかで安心して待ってるんだよ。陽奈さんを思っててくれれば、須賀くんが誰かに盗られる心配はないって。ヒドいでしょ。そんなのってズルいよね。でも、相手がお義姉さんじゃ応援できないし、助けてあげられないじゃん。私にはそばで見守ってることしかできない.........。」

「..........。」

「待ってたって、振り向いてもらえるどうかわからないのにね。」

「そんなことないよ。」

「..........。」


須賀くんはとても優しい声で一言だけ言って、その後、営業所に着くまでずっと黙っていた。

私は「嘘つき」って心の中で呟きながら、窓の外を見ていた。


そして、車を停めた後、須賀くんは私の髪をひと撫ですると、そのまま頭から抱え込むように優しく抱きしめてくれた。

嬉しくて泣きそうになったけど、泣かないように私も背中をギュっと抱きしめて我慢した。


須賀くんの腕の中はホっとしたし、私には聞こえた気がしたから。

声には出してないけど、須賀くんが何度も「ごめん」って謝ってるのが。

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