君を選んだから
「郁海はね、本当に可愛かったんだ。女の子みたいだった。」

「あぁ、それ、わかる気がする。」

「でね、俺のやってること、何でもやりたがるし、持ってるもの、何でも欲しがるの。」

「カワイイね。」

「そうか?ウザいだろ?」

「だけど、こいつ、モノとかは欲しがるくせに子供ながらに空気読む奴でさ、みんなのために努力するとか、我慢するとか、そういうのわきまえてた。」

「へぇ。」

「何だよ、それ、可愛くねーじゃん。大人びたガキで。」

「違うよ。優しいんだよ。人のために我慢しちゃうの。言いたいことがあっても、飲み込んじゃうみたいな?」

「.........そうか?」

「あおいちゃん、こいつ、会社で大丈夫? 今でもそうじゃない?」

「いえ、頑張ってますよ。」

「優し過ぎて損するタイプだからさ、助けてやってね。」

「はい。」

「って、何だよ。みんなして。」

「お兄ちゃんは心配してるんだよ、郁海くん。」

「優しいのは兄貴の方だよ。俺、兄貴にはワガママばっかり言ってたもん。」

「あらあら、ステキな兄弟愛。でも、私的には、どっちもすごく優しいと思うよ。」


兄貴があんなことを言うとは思ってなくて、ちょっと驚いたし、照れ臭かった。

だけど、俺って、そんな風に思われてるのかな。


優し過ぎて損するって、一体、どんな場面でだよ。

俺は、ちゃんと言いたいことを言って...........ないかもな。

< 165 / 188 >

この作品をシェア

pagetop