君を選んだから
言いたいことをきちんと言えるって、向井くんみたいなタイプかな。

自分に自信があって、やる気が漲ってて、「遠慮はしない」とか、ズバっと言えちゃう奴。


って、完全に卑屈になってんじゃん。

だいたい、向井くんにこんなに引け目感じ始めたのって、いつからだろう。

そこには、やっぱりあいつが絡んでるんだよな..........


それにしても、うちの家族とだいぶ仲良くなって、放置しても平気になっちゃったな、あいつ。

母親に捕まって、何やら一緒に作ってる姿は、もはや嫁にしか見えない。

笑っちゃうよな。

誰もニセ彼女とは思ってないみたいだ。

これは逆に、引き際が難しいかもな。


「郁海くん、はい、どうぞ。」

「これ、何?」

「お母さんの何か特製ジュース。」


陽奈さんが手渡してくれたジュースは、不気味な緑色をしていた。

試しにきなこにやってみたら、臭いを嗅ぐだけで、全然飲まねーし。


「郁海くん、変わったね。」

「え? 何が?」

「自分じゃわかんないか? ちょっと雰囲気変わった。きっと、あおいちゃんがイイ子だからだね。」

「そう?」

「何だろう、ゆとりがあるっていうか、前にも増して柔らかい表情してるっていうか、多分、そばにいてくれる子が優しいからだね。無意識かもしれないけど、すごく安心してるみたいな感じ。」

「..........。」

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