君を選んだから
バレンタインも差し迫ったある日の午後、あいつが俺にお願いをして来た。

恥ずかしながら逆パターンは多いけど、そんなことはそうそうないから、頼まれて、テンションも上がる。


一人でもできなくはないが、大掛かりな設置だから手伝ってくれると嬉しい。

そう言われて引き受けたのは、グリーンピア潮台店での七星堂フェアの設置。

今日は他店と約束があるから夕方以降になっちゃうけど、終わった後、一緒にご飯も行けると思うと張り切りたくもなる。


しかし、グリーンピアと言えば、最近、あいつに対して積極的な姿勢を見せている向井くんの所だ。

「遠慮はしない」って言われちゃったから多少は我慢するけど、 「元カレ」だって知ってるだけに面白くはない。


「あ、何だ。須賀くんも一緒に来てくれたんだ。別に俺がやるから良いのに。」

「いいよ。向井くん、忙しいでしょ。二人でチャチャっと作って帰るから。」


何だ、この会話。

お互い明るく言ってはいるけど、嫉妬してる同士の腹の探り合いかよ。


向井くんは間違いなくいい奴だと思う。

だけど、せっかく来てやったのに、第一声からそれじゃ腹が立つ。

いい大人だから顔には出さないけど、嫉妬も手伝って、余計にイラつく。


あいつも何だよ。

ちょっかい出されて、そんなに楽しそうにして。

見てて、不愉快。

あぁ、ストレスが溜まる。

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