君を選んだから
ベリベリっと豪快に音を立て、衣類用洗剤の段ボールの横側にある開封口をむしって行く。

これを一気にいっぱいやると、ちょっとスッキリする。


キレイに積み上げられた箱入り洗剤たちの姿も同様だ。

業界紙に載っていそうな完璧な売り場が出来上がると、嬉しくなって写真をコレクションしたくなる。


でも、そんな俺の地味な活躍をよそに、さっきから向井くんは楽しそうにあいつに張り付いている。

そりゃあ、あいつらは元恋人同士だし、今だって担当者だし、二人にしかわからない話もたくさんあるだろうとは思うよ。

だけど、そんな姿を見るために、俺はここまで付いて来たんじゃないんだよ!!


あぁ、俺、完全に嫉妬してる。

何か情けねー。

だんだん自分がイヤになって来る。


「まだ帰らないから、ちょっと、俺、他の売り場も見て来ていい?」

「うん。じゃあ、バックヤードにいるね。」


一旦、二人から目を離そう。

そう思って広い売り場をブラブラしながら、頭を冷やした。


なのに、一回りしてバックヤードの扉を開けたら、目に飛び込んで来たのは、さらに俺を苛立たせる景色だった。

あいつが両手にしたカタログを覗き込みながら、悔しいくらいにあまりにも自然に、向井くんが肩に手を回している。

それは元恋人同士の二人ならではの光景に見えて、あっと言う間に敗北感でいっぱいになった。

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