君を選んだから
それだけでもショックなのに、向井くんは顔を近付けたり、覗き込んだり、結構な至近距離まで攻めに行っている。

っつうか、これ、知らない人が見ても、特別な関係にしか見えないだろ。


本人たちは気付いてないのか?

あぁ、ムカつく。

イライラする。

何か、今日、俺、ダメだ。

そういうフィルターでしか見られない。


悲しい気持ちで近付いて行くと、あいつが嬉しそうに笑顔を向けた。

普通に笑ってるってことは、別に後ろめたくはないんだよな。


「須賀くん、どうだった? 新しい形の什器とか、あったでしょ。」

「あぁ、うん。」

「せっかく須賀くんいるし、今すぐ上がれるんなら飲みに行きたいんだけど、閉店までいなきゃいけないからさ。毎日残業だし、これじゃまた身体壊すよな。」

「また? もうすでに一回、やっちゃってんの?」

「うん。正月明け、倒れた。こいつが来てくれなかったら、寝込んだままだったかもしれない。」

「え? 行ったの?」

「あ、う、うん..........。」


..........マジか? 行ったのかよ。

だって、向井くんって一人暮らしだろ。

自分のこと好きだって知ってて、一人暮らしの男の部屋に上がるとか、無防備過ぎじゃね?


てか、好きだから行ったのか?

それは............ないと思いたいけど。

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