君を選んだから
「こんにちは。遅くなりました。」

「陽奈ちゃん、いらっしゃい。みんな待ってたよ。」


笑顔のお父さんに迎えられ、リビングに入って来た髪の長い女性は、スラっとして清楚な感じのするとてもキレイな人だった。


決して派手じゃないのに何故か目を引き、場の雰囲気を明るくする華やいだオーラみたいなものを纏っている。

両手にいっぱい抱えた花も、とてもよく似合う。

そして、何より穏やかで優しそうな雰囲気が、すでにここの家族にぴったりマッチしている。


「仕事は終わったの? 陽奈。」

「うん、何とか。遅くなってゴメンね。結局、注文が間違ってたみたいで、猛ダッシュで作り直してた。」

「うっそ! 間に合ったの?」

「もちろん。何があろうと間に合わせなきゃ、申し訳ないでしょ。」

「そうだよな。」


何のお仕事、されてるんだろう。

「作り直した」って言ってたよね。

そんなに納期が厳しいお仕事なのかな?

何だか大変そう。


「お母さん、いつもの花瓶、お借りします。ダイニングテーブルに生けさせてもらいますね。」

「ありがとう。いつも悪いわね。」

「いいえ、仕事場から持ってくるだけですから。ちなみに今日は郁海くんが彼女連れて来るって言うから、可愛らしい感じのお花、多めに選んで来たんですけど......。」

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