君を選んだから
そんな私の想いをよそに、須賀くんは至って普通の様子だ。

いつも通りのフワフワした雰囲気に、優しい笑顔。

とりあえずはその姿に安心する。


「昨日はありがとう。助かった。」

「あぁ、うん。」

「早速、お母さんがまた連れて来いってさ。」

「え? ホント?」

「悪いけど、またそのうち頼むわ。」

「うん、いいよ。」


やった。そっちの作戦は成功のようだ。

お母さんに気に入ってもらえたなら、グっとチャンスも広がる。


聞いたところで須賀くんが本当の気持ちを白状するとも思えないし、いつまでも尻込みしてる場合じゃない。

今まで通り、そばにいて、少しずつ探りを入れて行くしかないか。


「よっ、お二人さん。おはよう。」

「あ、おはようございます。」

「今日のグループ会議は、重大発表あるから。楽しみにしててね。」

「はいっ。」


何だろう?

主任の重大ニュースはいつも大したことじゃないから、期待はしてないけど。

会社の中で大きな動きがある気配はないから、取り引き先で何かあったかな。


「多分、担当店舗の変更だと思う。」

「そうなの?」

「俺のエリアの中に、ここ何ヶ月だけで大型新店3つできるから。」

「ホント? 大変じゃない?」

「だろ? 売り上げは増えるだろうけど、共食い状態になって既存の小型店がヤバいよね。」

「そうだよね。」

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