君を選んだから
念のため、エプロンをバッグに忍ばせ、お土産に人気店のフルーツゼリーも用意しておいた。

まるで恋人の家に初めて遊びに行くみたいでソワソワしてしまう。


って言うか、いっそのこと、本当にそうなっちゃえばいいのに。

正式な彼女としてお呼ばれするなら、それ相応の覚悟で挑むんだけどな.......


なんてバカなことを考えながら待ち合わせの駅に向かうと、改札の外で須賀くんが待っていた。

私服姿は今までにも何度か見たことはあるけど、やっぱりオシャレ。

カレッジ風のレタードカーディガンに細身のダメージジーンズとワークブーツを身に纏った彼は、スーツ姿よりも若く見えるし、可愛い。


これが私にとって当たり前の風景になったら、どんなに幸せだろう.......

そんな妄想を抱きつつ、改札を抜けると、私に気付いた須賀くんが柔らかく微笑んだ。


「おはよう。今日はありがとう。」

「こちらこそ、呼んでいただいてありがとう。」


目を合わせて挨拶をして、ここまでは普通の会話だったと思う。

ところが、須賀くんの発した次の一言で、私の思考回路はショートした。


「早速なんだけどさ、今日一日、お前は俺の彼女ね。」

「へ? えっ、えぇぇ~っ!?」

「なんつー声出してんだよ。」

「だ、だって、そんなの聞いてなかったから.......。」

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